骨髄増殖性腫瘍

骨髄増殖性腫瘍の種類

血液疾患のうち、骨髄増殖性腫瘍があります。

骨髄増殖性腫瘍は下記のように分類されます。
・慢性骨髄性白血病 BCR-ABL1陽性 (Chronic myeloid leukemia, BCR-ABL1-positive)
・慢性好中球性白血病 (Chronic neutrophilic leukemia)
・真性赤血球増加症 (Polycythaemia vera)
・原発性骨髄線維症 (Primary myelofibrosis) 
  前線維化期/初期 (prefibrotic/early stage)
  線維化期 (overt fibrotic stage)
・本態性血小板血症 (Essential thrombocythaemia)
・慢性好酸球性白血病、非定型型 (Chronic eosinophilic leukemia, not otherwise specified)
・骨髄増殖性腫瘍、分類不能型 (Myeloproliferative neoplasma, unclassifiable)

 

 

真性赤血球増加症

真性赤血球増加症の診断基準(改定第4版(2017))

大項目
1. ヘモグロビン値が男性 16.5 g/dL, 女性 16.0 g/dLを超える、もしくはヘマトクリット値が男性49%, 女性48%を超える、もしくは赤血球量が予測値の25%以上を超える。
2. 骨髄生検において、赤芽球系、顆粒球系、巨核球系細胞(多形成熟巨核球)の3系統の増殖により過形成を示す。
3. JAK2 V617F変異またはJAK2 exon12変異が存在
小項目
血清エリスロポエチン低値
3つの大項目クライテリアを満たす、もしくは大項目クライテリア1,2と小項目クライテリアを満たす

多血後骨髄線維症(post-PV MF)の診断基準

必須項目
1. 以前にWHO分類で 真性赤血球増加症と診断されている
2. grade2~3(0~3スケール), grade3~4(0~4スケール)の骨髄線維化がみられる
付加的項目(2項目を要する)
1. 貧血がある、もしくは抗がん薬を投与されていないにもかかわらず瀉血の必要がない、もしくは抗がん薬投与の必要がない
2. 白赤芽球症を認める
3. 脾腫の増悪を認める(左肋骨弓下5cmを超える触知可能な脾腫、もしくは新たに触知可能となった脾腫)
4. 以下の症状が2つ以上みられる
・6か月間に10%以上を超える体重減少がある
・盗汗
・説明のできない37.5℃を超える発熱

 

原発性骨髄線維症

原発性骨髄線維症(前線維化期/初期)の診断基準。

大項目3つとすべてと、少なくとも1つの小項目を満たしたときに前線維化期/初期の原発性骨髄線維症と診断します。

大項目
1.巨核球の増殖と異型性を認める。グレード1*を超える細網線維化はなく、年齢相当より過形成骨髄であり、顆粒球系細胞の増殖と、しばしば赤血球系造血の抑制を伴う。
2. 慢性骨髄性白血病、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、骨髄異形成症候群、あるいはほかの骨髄系腫瘍のWHO基準を満たさない。
3. JAK2, CALR, MPLのいずれかの遺伝子変異を認める。これらの遺伝子変異が存在しない場合は、他の造血細胞のクローン性増殖を示すマーカー☨を認めるか、あるいは軽度の反応性の骨髄細網線維化⁑でないこと。
小項目
以下の少なくとも1つの所見が、2回連続して確認されること。
a. 併存症によらない貧血
b. 白血球増加≧1.1万/μl
c. 触知可能な脾腫
d. 血清LDHの上昇(施設基準を超える)
*骨髄線維化のグレード分類WHO改定診断基準(2016)を参照。
☨JAK2, CALR, MPLいずれの遺伝子変異も認めない場合には、他に頻度の高い遺伝子変異(例:ASXL1, EZH2, TET2, IDH1/IDH2, SRSF2, SF3B1)の検索がクローン性疾患であることの同定に有用である。
⁑感染症、自己免疫疾患、他の慢性炎症性疾患、へアリー細胞白血病や他のリンパ系腫瘍、がんの転移、中毒性(慢性)骨髄障害などによる反応性(二次性)の軽度細網線維化(グレード1)。

原発性骨髄線維症(線維化期)の診断基準

大項目3つとすべてと、少なくとも1つの小項目を満たしたときに線維化期の原発性骨髄線維症と診断します。

大項目
1. グレード2または3の細網線維化や膠原線維化を伴う巨核球の増殖と異型性を認める。
2. 慢性骨髄性白血病、真性赤血球増加症、本態性血小板血症、骨髄異形成症候群、あるいはほかの骨髄系腫瘍のWHO基準を満たさない。
3. JAK2, CALR, MPLのいずれかの遺伝子変異を認める。これらの遺伝子変異が存在しない場合は、他の造血細胞のクローン性増殖を示すマーカー☨を認めるか、あるいは反応性の骨髄線維症⁑でないこと。
小項目
以下の少なくとも1つの所見が、2回連続して確認されること。
a. 併存症によらない貧血
b. 白血球増加≧1.1万/μl
c. 触知可能な脾腫
d. 血清LDHの上昇(施設基準を超える)
e. 白赤芽球症
*骨髄線維化のグレード分類WHO改定診断基準(2016)を参照。
☨JAK2, CALR, MPLいずれの遺伝子変異も認めない場合には、他に頻度の高い遺伝子変異(例:ASXL1, EZH2, TET2, IDH1/IDH2, SRSF2, SF3B1)の検索がクローン性疾患であることの同定に有用である。
⁑感染症、自己免疫疾患、他の慢性炎症性疾患、へアリー細胞白血病や他のリンパ系腫瘍、がんの転移、中毒性(慢性)骨髄障害などによる反応性(二次性)の骨髄線維化。

骨髄線維化のグレード分類

骨髄線維化のグレードはMF-0からMF-3までの4段階に分類されます。


MF-0
交差を示さない線状の細網線維が散在性にみられる。正常の骨髄に相当する。
MF-1
多数の交差を示す細網線維の疎なネットワークが、特に血管周囲にみられる。
MF-2
著しい交差を示す細網線維のびまん性で密な増加がみられる。ときに厚い膠原線維束や骨硬化が限局してみられる*。
MF-3
著しい交差を示す細網線維と、粗くて厚い膠原線維束のびまん性で密な増加がみられる。通常骨硬化を伴う*。
膠原線維と骨硬化症に関する微修正を反映した骨髄線維症の半定量的評価。
線維の密度は造血領域においてのみ評価する。
*MF-2またはMF-3のグレードについては、(マッソン)トリクローム染色の追加が推奨される。

 

本態性血小板血症

本態性血小板血症の診断基準(WHO分類改定第4版(2017))

大項目
1. 血小板増加(45万/μl以上)
2. 骨髄生検にて大型に成熟し、過分葉の核を持つ巨核球の増加を伴った、主に巨核球系細胞の増殖を認める。顆粒球系細胞および赤芽球系細胞の明らかな増殖、左方移動を認めない。軽度の細網線維の増加(grade1)はごく稀にのみ認める。
3. PV, PMF, BCR-ABL1陽性のCML, MDSおよび他の骨髄性腫瘍のWHO診断基準を満たさない。
4. JAK2,CALR,MPL遺伝子変異を持つ。
小項目
クローナルマーカーが存在する。または、反応性血小板増加症の所見がないこと。
4つの大項目のクライテリアを満たす、もしくは大項目1,2,3と小項目のクライテリアを満たす。

 

本態性血小板血症後骨髄線維症(post-ET MF)の診断基準

必須項目
1.以前にWHO分類でETと診断されている。
2.grade2~3(0~3スケール),grade3~4(0~4スケール)の骨髄線維化がみられる。
付加的項目(2項目を要する)
1. 貧血があり、基準値から Hb 2g/dl を超える低下がある
2. 白赤芽球症を認める
3. 脾腫の増悪を認める[基準から新たに5cm (左肋骨弓下から)を超える触知可能な脾腫、もしくは新たに触知可能となった脾腫〕
4. LDHの上昇(基準値を超える)
5. 以下の症状が2つ以上みられる
 ・6か月間に10%を超える体重減少がある
 ・盗汗
 ・説明のできない37.5℃を超える発熱