喘息とは
喘息とは、「気道の慢性炎症を本態とし変動性を持った気道狭窄(喘鳴、呼吸困難)や咳などの臨床症状で特徴づけられる疾患」とされています。
もう少しわかりやすく言うと、呼吸がぜーぜー・ひゅーひゅーして息苦しい、咳が出ることもある、けれども症状はずっと続くわけではなくよくなったり、悪くなったり変動する、その病態には気道の慢性的な炎症が関係している、というものです。
喘息の症状
喘息の症状として発作性の呼吸困難、喘鳴(呼吸がぜーぜー、ひゅーひゅーする)、胸苦しさ、咳などを認めます。これらの症状は常に出ているわけではなく、落ち着いていることもあれば、発作としてでてくることがあるのが特徴です。発作性の呼吸困難や喘鳴は、喘息以外の肺疾患や心不全などの循環器疾患などでも起こりますが、喘息では夜間や早朝に出現することが多いです。また風邪を引いたときや気圧が低くなったときに発作が出ることもあります。
喘息の原因
喘息の原因としてアレルギーの関与が考えられます。ハウスダスト、ダニ、カビなどの環境アレルゲンに対する特異的IgE抗体が1つ以上存在する場合、アトピー型喘息が考えられます。その他に喫煙、大気汚染、ストレスなどの影響も考えられます。
喘息の治療
喘息の治療は、症状をコントロールすること、将来のリスクを回避することが重要となります。
症状のコントロール:発作や喘息症状がない状態を保ち、正常な呼吸機能を保ち、健常人と変わらない日常生活を送ることができる。
将来のリスク回避:呼吸機能の低下を防ぎ、喘息死を回避する。治療薬の副作用発現を回避する。
具体的には下記の各種薬剤を使用しながら、喘息をコントロールしていくことになります。また喫煙者は禁煙することが重要です。
喘息治療薬は、普段発作が出ないように使用する薬(長期管理薬)と発作時に使用する薬(発作治療薬)があります。
〇長期管理薬
1.ICS(ステロイド吸入)
2.LABA(吸入、貼付、経口薬)
3.ICS/LABA配合剤
4.LTRA
5.テオフィリン徐放製剤
6.LAMA
7.抗IgE抗体
8.抗IL-5抗体
9.抗IL-5受容体α抗体
10.抗IL-4受容体α抗体
11.LTRA以外の抗アレルギー薬
12.その他の薬剤・療法
〇発作治療薬
1.ステロイド(経口、注射)
2.短時間作用性気管支拡張薬
①SABA
②テオフィリン製剤
③SAMA
〇長期管理薬
1.ICS(ステロイド吸入):喘息は気道の慢性炎症が本態です。ステロイドには抗炎症作用があり、吸入ステロイドで気道の慢性炎症を抑えます。吸入する量はμgの単位であり、経口で投与する場合(㎎)と比べて微量であり、全身性の副作用は少ないです。
キュバール、フルタイド、パルミコート、オルベスコ、アズマネックス、アニュイティなどです。
副作用として、口腔内のカンジダ症(真菌感染症)、嗄声(声が枯れる)などがあります。嗄声予防には吸入後によくうがいをすることが重要です。食前に吸入することも対処方法のひとつです。
2.LABA(吸入、貼付、経口薬):長時間作用性β2刺激薬です。自律神経(交感神経)のβ2を刺激すると気管支は拡張します。LABAの吸入薬はセレベント、オンブレス、オーキシス、貼付薬はツロブテロールテープ、経口薬はスピロペント、ツロブテロールなどです。
3.ICS/LABA配合剤:上記のICSとLABAの両者が入った薬剤です。アドエア、シムビコート、フルティフォーム、レルベアなどです。シムビコートは発作時の吸入薬としても使用できます。
4.LTRA:ロイコトリエン受容体拮抗薬です。抗アレルギー薬の一種です。プランルカスト(オノン)、モンテカルスト(シングレア、キプレス)などです。
5.テオフィリン徐放製剤:テオフィリン製剤には気管支拡張作用と抗炎症作用があります。テオフィリン徐放剤、アミノフィリンなどです。テオフィリンは血中濃度が高くなりすぎると副作用が出やすくなります。副作用としては悪心・嘔吐などの消化器症状、けいれん、不整脈などがあります。血中濃度は20ng/mlを超えないように、5~15ng/mlでコントロールするのが目安となります。
6.LAMA:長時間作用性抗コリン薬です。LAMAは副交感神経をブロックすることで気管支拡張作用を示します。スピリーバ、シーブリ、エンクラッセなどです。副作用としては口内乾燥、眼圧上昇、心悸亢進、排尿困難などがあります。
1から6の組み合わせの治療でもコントロールが難しい重症の場合は、7~10の抗体薬を使用します。抗体薬はそれぞれ対象となる部位に結合してその働きをブロックすることで作用を発現します。
7.抗IgE抗体:血液中のIgEに結合するモノクローナル抗体です。ゾレアです。
8.抗IL-5抗体:IL-5(インターロイキン5)に対するモノクローナル抗体です。ヌーカラです。
9.抗IL-5受容体α抗体:IL-5の受容体のα鎖に対するモノクローナル抗体です。ファセンラです。
10.抗IL-4受容体α抗体:IL-4受容体αに対する抗体で、IL-4, IL-13の作用をブロックします。デュピクセントです。
11.LTRA以外の抗アレルギー薬:LTRA以外の抗アレルギー薬を併用することもあります。
12.その他の薬剤・療法:漢方薬では小青竜湯や麻杏甘石湯などが使用されます。
〇発作治療薬
1.ステロイド(経口、注射):炎症を抑えます。ベタメタゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロンなどです。
2.短時間作用性気管支拡張薬
①SABA:短時間作用性β2刺激薬です。交感神経のβ2を刺激して気管支を拡張させます。ベネトリン、サルタノール、メプチンエアーなどです。1回の吸入で発作が良くならない場合は、20分おきに反復します。
②テオフィリン製剤:点滴でアミノフィリンを投与します。
③SAMA
3.アドレナリン:重症発作時は0.1%アドレナリン(ボスミンなど)を皮下注射します。
喘息発作を頻回に認める場合は長期管理薬を調整して喘息発作が出ないようにコントロールすることが重要です。