貧血の原因を考えるにあたりMCV(平均赤血球容積)を考えてきました。MCVが小さくなる小球性貧血、MCVが大きくなる大球性貧血、そしてMCVが変わらない貧血、正球性貧血もあります。
正球性貧血のときに確認する項目に網状赤血球があります。赤血球は元々は骨の中の骨髄で産生されますが、骨髄でがんばって赤血球を作っているときは網状赤血球は増加します。一方、骨髄で赤血球が作られていないと網状赤血球は低下します。
網状赤血球が十分にある(産生されている)にも関わらず、正球性貧血を来しているときは出血や溶血を考えます。出血は文字通りどこからか血が出て血液が失われてしまっている状況です。少量ずつ時間をかけて出血している場合は小球性の鉄欠乏性貧血になりますが、急性出血の場合は正球性貧血になります。もう一つの溶血は作られた赤血球が何らかの原因で破壊されてしまう病態です。自己免疫疾患(自分で自分の赤血球を破壊してしまう)や脾機能亢進症などで認められます。
話はそれますが、脾臓ってご存じでしょうか。おなかの中にある臓器の一つで左の腎臓の上の方に位置します。リサイクル工場みたいな役割をしていて古くなった赤血球を破壊して鉄分を取り出して、また赤血球を作るのに利用します。脾機能亢進症はリサイクル工場が巨大化してどんどん赤血球を壊してしまい、貧血になってしまいます。
網状赤血球が少ない場合は骨髄で赤血球が十分に作られていない可能性があります。腎臓が悪くなると腎性貧血になることがあります。腎臓からエリスロポエチンというホルモンが分泌されています。エリスロポエチンは骨髄に赤血球を作れ!作れ!と指令を出しているホルモンです。腎臓が悪くなってエリスロポエチンが減ると、指令が少なくなった骨髄は赤血球を作るのをさぼってしまい、貧血になってしまいます。
またその他にも骨髄そのものに原因があり赤血球が作れなくなることもあります。再生不良性貧血という病気は赤血球だけでなくて、白血球や血小板なども十分に作れなくなってしまう病気です。再生不良性貧血が疑われたときは骨髄検査など専門的な検査や治療が必要になってきます。