高脂血症(脂質異常症)

高脂血症(脂質異常症)とは

高脂血症もよくある病気の一つですが、血液中の脂質が増加して動脈硬化のリスクが高くなる病気の一つです。以前は(今でも)高脂血症と言われていますが、善玉コレステロールは少ない方がリスクが高くなるため、脂質異常症と言われるようになってきました。

高脂血症(脂質異常症)の診断基準

健康診断の結果を見直していただくと、T-chol、HDL-C、LDL-C、TGなどがないでしょうか。T-cholは総コレステロール、HDL-Cは善玉コレステロール、LDL-Cは悪玉コレステロール、TGは中性脂肪のことです。これらの脂質は食事の影響を受けやすいので、通常は10時間以上絶食して空腹時に確認します。空腹時の採血でLDL-C 140mg/dl以上を高LDL-C血症、HDL-C 40mg/dl未満を低HDL-C血症、TG 150mg/dl以上を高TG血症と定義し脂質異常症と診断しています。

計算式でのLDL-C(悪玉コレステロール)の求め方

一般診療でT-chol(総コレステロール)、HDL-C(善玉コレステロール)、TG(中性脂肪)の3項目を検査して、LDL-C(悪玉コレステロール)をとらない(とれない)ことがあります。その場合は下記のFriedewaldの式でLDL-Cを計算して求めます。

LDL-C = T-chol - HDL-C - 0.2×TG (ただしTGは400mg/dl未満の場合です)

例えば、T-chol 240mg/dl, HDL-C 40mg/dl, TG 120mg/dl の場合、
LDL-C = 240-40-0.2×120=176 mg/dl となります。

高脂血症(脂質異常症)の症状

多くの場合は自覚症状はありませんが、家族性高コレステロール血症では特徴的な皮膚所見(皮膚結節性黄色腫)を認めることがあります。またアキレス腱にもコレステロールが沈着してアキレス腱が分厚くなる(肥厚)こともあります。角膜輪といって黒目に白いリング状の沈着物を認めることもあります。

高脂血症(脂質異常症)の原因

高脂血症(脂質異常症)の原因として、家族性高コレステロール血症があります。家族性高コレステロール血症は若いころからLDL-C(悪玉コレステロール)が増加してしまい、動脈硬化が進んでしまう病気です。軽症のケース(ヘテロ接合体と呼ばれます)は200~500人に1人、重症のケース(ホモ接合体と呼ばれます)は100万人に1人以上の頻度と言われています。
どんな場合に家族性高コレステロール血症を疑うでしょうか。
・未治療のLDL-Cが180㎎/dl以上
・皮膚や腱(アキレス腱)に黄色腫(コレステロールが沈着した黄色っぽい隆起)を認める・家族内で、家族性高コレステロール血症または若年で冠動脈疾患(狭心症、心筋梗塞など)と診断されている

上記に該当する場合は家族性高コレステロール血症の疑いがあります。

その他にも、生活習慣(食事週間、飲酒頻度、運動習慣)、肥満、糖尿病、甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、ホルモン異常、薬剤性などが原因として考えられます。

また女性ホルモンとの関連も指摘されています。女性は閉経前後になるとエストロゲンという女性ホルモンが減少するため、脂質異常症が発症しやすくなります。

高脂血症(脂質異常症)の合併症

高脂血症(脂質異常症)の状態が続くと、動脈硬化が進行し、心筋梗塞などの冠動脈疾患や脳梗塞を発症するリスクが高くなります。治療の目標は脂質をコントロールして心筋梗塞や脳梗塞などの合併症を引き起こさないことになります。

中性脂肪が高い場合、急性膵炎を発症することもあります。

 

高脂血症(脂質異常症)の治療

治療はまず食事や運動などの生活習慣を見直すことが必要です。

・禁煙する、受動喫煙を回避する。
・過食と運動不足に注意し、適正な体重を維持する。
・肉の脂身、動物脂、鶏卵、果糖を含む加工食品の大量摂取を控える。
・魚、緑黄色野菜を含めた野菜、海藻、大豆製品、未精製穀類の摂取量を増やす。
・糖質含有量の少ない果物を適度に摂取する。
・アルコールの過剰摂取を控える。
・中等度以上の有酸素運動を、毎日合計30分以上を目安に実施する。

 

生活習慣の是正で改善しないときは薬物療法が必要になります。

脂質異常症の薬は各種ありますが、脂質異常症の病態に合わせて使用します。一般的には内服薬が主体となります。

スタチン:ロスバスタチン、アトルバスタチン、プラバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン
小腸コレステロールトランスポーター阻害薬:エゼチミブ
陰イオン交換樹脂:コレスチミド、コレスチラミン
プロブコール:プロブコール
フィブラート:ベサフィブラート、フェノフィブラート、クリノフィブラート、クロフィブラート
ニコチン酸誘導体:ニセリトロール、ニコモール、ニコチン酸トコフェロール
n-3系多価不飽和脂肪酸:イコサペント酸エチル、オメガ-3脂肪酸エチル

悪玉コレステロールが多い場合はスタチン主体で治療を行います。

また今までに心筋梗塞などの冠動脈疾患にかかったことがある方は、冠動脈疾患が再発しないようにLDL-Cをしっかり下げる必要があります。